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第二十八章 飛び立った天使

 

 

 

 あなたたちを乗せた空中船は、雲をいくつも突き抜け昇っていきます。そして一つの雲を抜けたとき、そこには異形の怪物が待ち構えていました。
 巨大な翼を持つ、銀色の蛇。真っ先に思いついたのはそういったイメージでした。空中に停滞するために羽ばたく際に生じる重苦しい風圧は耳にうるさく、恐らく最大まで広げれば劇場船のそれを優に超えることでしょう。巨翼は扇状に外側に拡がり、角には岩肌を思わせる無骨な棘が生えています。体の表面を覆う鱗は全てこの棘と同じような岩肌をしております。そして、背には下方へ向けられた棘が並んでいます。
 顔は岩で出来たかぶとのような形をしており、頭頂部には一際大きい角があります。そして目の辺りには紅の眼光が奥底に秘められております。噛み千切ることしか考えられていない荒々しい牙は、その巨大さゆえに収納できずに閉口している今でさえ銀色の光を放ちます。
 尾は先端に行くに連れて徐々に細くなっていきますが、最先端に至ると槌のように太く大きくなります。棍棒のように見えますね。
 全てが規格外の怪物です。
 しかし、あなたたちを最も萎縮させたのは、風圧を生む翼でも、岩肌の棘でも、鉄をも砕く牙でもありませんでした。
その眼光と、頭に響く声でした。
《我を目覚めさせたのは……汝らか。ふふふ、ふはははは。例を言うぞ、小さき者共よ》
 ゆっくりと羽ばたく銀龍。あなたはクラリスの背に掴まり、空中船で銀龍と相対していました。
《感謝の意を込め、苦しまぬように殺してやろう。さあ、焼け死ぬのか、噛み殺されるのか、好きな方を選ぶといい》
「冗談じゃないよ! わたしたちが、あんたを倒す!」
《……我の好意を拒むとは、愚か者め!》
 銀龍は一度大きく翼を上へと広げると、そこから一気に翼を前方へ畳みこみました。生じる空気抵抗など意にも介さず翼は一瞬で折りたたまれ、風が打撃物としてあなたたちを襲います。
「ベル! しっかり掴まってて!」
 あなたの視界が上下に揺らされます。風によるものではなく、船が真下に急激に落下したからです。空に逃げ場はないと踏んでの行動でしょうが、たまったものではありません。振り落とされそうになりますが、何とかクラリスに掴まって落ちずにすみました。
 直後、頭上で突風が槍のように掠めていきました。危うく巻き込まれてしまうところでしたが、何とか持ちこたえました。
 しかし、船の装甲が空を舞っています。重要な部位でないとは言え、これは不安です。
――――大丈夫なのか?
「さあね!」
 クラリスがアクセルを思い切り踏み込みます。
 風に逆らって前進する飛行船は銀龍との距離を一気に縮めていきます。
 そして、あなたは、私から教わったあるものを発見しました。
――――クラリス、頭だ!
「うん、わたしも見えたよ!」
 あなたたちが互いに確認したのは、銀龍の角でした。
 額の部分に堂々と生えている巨大な角。それを砕かない限り、銀龍を倒すことは叶いません。『インペリアル』はそもそも一般的には何の役にも立たないもので、銀龍を滅するためだけに作られた魔法です。しかし、それには相手の魔力が放出状態でないとならない。銀龍はその莫大な力を抑制するために、額の角に魔力を込めて制御しているのです。故に、まずは本気を出してもらわないとならないわけです。
《来るか、小さき者共!》
 銀龍はこちらの接近を待ち、身を右回しに大きく捻りました。その巨体のせいで微かな動きでも大気に与える振動は絶大なものがあります。
 あなたは風に身の制動を奪われながらも、銀龍の攻撃を見ていました。
 尾です。先端が槌のようになっている尾をぶん回してぶつけようとしています。それを確認したあなたは、魔法書を展開して対処にあたりました。クラリスは、速度を緩めることなく突っ走ります。
――――『ラトニグ』!
 大声を張り上げ、風に舞うページを一気にめくりました。
 今までにない数の閃光が空を覆い、雷のベールが生まれました。それは迫りくる尾に直撃し、何とか弾き返せました。かなり危険な勝負でした。あと少し雷撃が少なければ、こちらが弾かれて、船ごと消えていたことでしょう。
「いっけぇぇぇぇぇ!」
 飛行船は銀龍の懐まで潜り込むと、顔を目指して、地上と垂直になるような体勢で駆けていきました。重力に押し戻されそうになりますが、それでも駆け抜けていきます。やがて顔の傍にまで至り、 クラリスが操縦席を離れて双剣を抜き放ちます。
「ベル、ちょっと運転お願い!」
――――は?
 角の真上に来たところで、クラリスは完全に操縦桿を手放して船から身を乗り出し、双剣を船体から飛び出させました。ああ、やりたいことが分かってしまいます。角を折るのは自分の役割だと思っていたのに、どうやらクラリスがやるようです。確かに、不安定な場所での魔法は得意ではありませんし、最大の火力を持った『トール』は移動しながら撃つことの出来ない魔法であるため、角を一撃で折るのであれば、クラリスの『イクス』の方が可能性は高いのです。
 呆れながらも操縦桿を握り、見よう見まねで操作するものの、ただ重力に従って落ちていくだけです。最低限落ちる場所を角に合わせるのが精一杯で、成功しても無事に脱出出来るか不安が残ります。
 瞬間、風が吹きました。
 飛行船は風にさらわれ、角から大きく遠ざかってしまいました。これではとてもではありませんが双剣は届きそうにありません。諦めて次なる好機を窺おうとしたあなたでしたが、クラリスは諦めていませんでした。
「『イクス』!」
 クラリスは、飛んでいました。
 船体を蹴り、宙を飛ぶと、銀龍の巨大な角に二閃の斬撃を浴びせたのです。
 それは瞬時に赤い亀裂となって輝きだし、直後には、爆ぜました。
《ぐぁ!》
 銀龍の呻き声が短く轟きました。しかしそんなことを気にしている余裕などないのです。あなたは爆風を受けて宙を漂うクラリスへと何とか飛行船を走らせ、一旦操縦桿を手放すと、魔法書を展開しました。
――――『エアー』!
 クラリスの身が急に降下を止めます。そして後はゆっくりと安全運転でクラリスの身を回収しました。
「こ、こわかったー……」
 クラリスが脱力した様子でへたり込みます。
――――あんな無茶な真似、頼むからやめてくれ!
「えー、だって……ベルが助けてくれるって、信じてたから。別にあれは自分が犠牲とか、考えてないからね。ほんとに怖かったもん」
 そう笑顔で言われては、強く叱責することも出来ません。
 改めてクラリスが操縦桿を握ると、あなたはすぐに一冊の魔法書を取り出しました。それは、今までに使ったことのない、魔法書です。
「ベル、決めちゃって!」
攪乱された銀龍には、今、大きな隙ができています。その姿をよく見れば、角が大きく欠けています。破壊に成功したのです。
 あなたは叫びます。
――――『インペリアル』!
 その瞬間、あなたの前には金の槍が現れました。あなたの身長の倍ほどある、巨大な槍。金龍の使ったという魔法『インペリアル』です。槍は風を切り、まっすぐ敵に飛んでいきます。
《何ッ?》
 銀龍も、これは予想外だったと見えます。巨体は機敏な動きに難があるらしく、一歩間に合わずインペリアルは龍の尾を貫きました!
《ぐああああああああああっ》
 あなたはこの一撃で仕留めたかったのですが、仕方がありません。
《おのれ……人間風情が、調子に乗るなあ!》
 銀龍は吠えました。そのときです。龍からゆっくりと霧が広がっていきました。
 銀龍の展開した霧……それは『ロー』です。ゆっくりと、しかし確実に広い空間を覆っていきます。
――――クラリス下がれ!
 空中船の反応では逃げきれません! あなたはエアーで空中船を後方に吹き飛ばしました。その直後、霧は灼熱に包まれます。凄まじい爆風が、熱波を飛ばしました。
《はずしたか。運がいいのだな》
 銀龍は牙を立てて飛びかかってきました! クラリスはそれをかわします。そのときあなたは気付きました。ローが、消えています。銀龍が動くと、ローは維持できないようですね。

 銀龍が再びローを展開します。今度はかなり近くにいるので、逃れようがありません。あなたは素早く考えを定めました。
――――『インペリアル』!
《!》
 槍が飛びます。そこで銀龍は、まだローが小さいにも関わらず、『エルプト』を発動させることになりました。インペリアルは、灼熱の中に飛び込んでいきます。
《ふ……無駄だ。力の差は歴然としている》
 龍の言うとおり、インペリアルはエルプトに防がれてしまいました。
《ふはははは、もう後が無いな》
 あなたはたじろぎます。嘘ではないのです。サイファーたちと別れた後、私が語ったことを思い出します。
龍の魔法はその強さゆえに、三発が限界。あなたはもはや、後一度しか攻撃ができないのです。チャンスはもう残されていません。
 しかし、逆を返せば、『エルプト』も後一度しか使えないということに他なりません。龍は既に最後のローを展開しています。しかし、周りに囲むものは何も無いのです。エルプトの回避は、不可能ではないでしょう。銀龍もそれはわかっているはず。
 間違いありません。ローの目的は、インペリアルを防ぐことにあるのです。
 格闘戦になれば、あなたたちに勝ち目はありません。そもそも、龍はエルプトを使う必要など無いのです。それにも関わらずローを展開しているのは、インペリアルを使わせるため。あなたは、確信しました。
――――ローはフェイクだ。次は、打撃で攻撃してくる。
 勝機は、一度しかありません。次に銀龍が動き、ローが消えた瞬間、インペリアルを叩きこむ。
 ですが、早過ぎれば『エルプト』に阻まれ、遅ければあなたたちは龍の爪にかかることでしょう。
どちらにしても、これが最後です。今、世界の命運を握る戦いに、決着がつこうとしていました。
クラリスが祈るように拳を握りしめます。
 銀龍が吠え、その瞬間……!

 呪文は聞こえずに、金の槍は飛鳴しました。しかし、ローは未だ完全に消えてはいなかったのです! 少々弱まっているとはいえ、爆炎がインペリアルを阻みます!
 凄まじい光。あなたは目を覆います。

 ……しかし。
 光が、不意に消えました。
《……ふはははは》
 目を開けたあなたの前には、
《所詮は、人間と言うことか……》
 先ほどと何も変わらない、
《もはや、手ごたえも感じなかった》
 銀龍が、残っていました。

     ◆ ◆ ◆

 ちょうどその頃、雪山の城にいた生身の私の元には、多くの僧がドヤドヤとなだれ込んできました。
 私は一瞬身構えましたが、彼らには敵意を感じませんでした。何より、彼らと共にやってきた人物が私の警戒を解きました。バートレー・ラスティです。それに、僧侶の一団を率いているのは、リミュニア・ダアトでした。
 僧侶たちは私を救助しに来たのでした。
「ここに来たということは、ノアニール姉弟はうまくやったんですね」と私が聞くと、バートレーは少しためらい、しかし答えました。
「ああ。ちょっと問題はあったが、全部うまくいった」
「それならよかった」
「……そうだ、あんたはベルの意識に語りかけたり出来ねえのか? 出来たらオレらの応援を伝えてほしいんだけどよ」
 私はそりに乗せられながら、遠くを見ながら答えました。
「それには遅すぎましたよ。もう、終わってしまいましたから」

     ◆ ◆ ◆

 銀龍のエルプトは、尽きました。しかしあなたも、『インペリアル』を使い切ってしまったのです。もはや、世界の命運もここまででしょう。
《所詮、汝らはその程度だということだ……。どこで手に入れたのかは知らないが、借りものの力に過ぎぬ。金龍の魔法を扱うには、未熟だったな》
 高らかに笑う銀龍は、しかし動きが鈍い。魔力を相当消費していることもあり、かなりの疲労があるのでしょう。それでも、たった二人の人間を殺すぐらい、造作も無いに違いありません。
 もはや、手は無い。そんな状況下、あなたは前触れなく呟いたのです。
――――『インペリアル』。

     ◆ ◆ ◆

 金色の槍が、ゆっくりと実体化していました。あなたの疲れを反映してか、発動に時間こそかかっているものの、間違いなくそれはインペリアルです。
《どうなっているんだ……!》
 慌てふためく龍。その答えは、意外なところから告げられました。
「『イーミア』っていう魔法をご存知?」
 龍の周りを旋回しながら、いつも通りの穏やかな声。クラリスは、にっこりと微笑んでいました。
 銀龍は、一瞬何を言われたのかわからなかったのでしょう。なぜ、その魔法がここで出てくるのだ、と。クラリスの父、ラファエルの形見である、幻影の魔法。……まさか。
《おのれ、小娘!》
 結論に、達したようです。
「うん。さっきの三発目の槍は、ベルのインペリアルじゃないよ。わたしの『イーミア』で生み出した、幻影」
 そう言って握っていた拳から現れたのは石板の欠片でした。幻帝の用いた魔法書を映された石版の一部のようです。
 そう。手ごたえなど、感じるはずも無かったのです。インペリアルは、どんどん実体となっていきます。もはや龍は、この槍をかわすことも、止めることもできません。
《ふ、ふはははは……》
 銀龍は笑い出しました。それは、実にたのしそうな笑いでした。
《まさかそんな手があるとはな……。これで形勢逆転、我の完敗だ。どうやら、世界は未だ滅びを求めていないらしい。よもや、この我が器と同じ結論に達するとはな!》
 龍はひとり頷き、滞空しながら四肢を広げました。その姿からは、決意が感じられます。
《ふはははは! ふはは! 汝らのような人間ならば、我を滅ぼすのにふさわしい! ひと思いに、やりたまえ!》
 あなたは、厳粛に頷きました。

 金の槍がその身を貫くまで、龍は笑い続けていました。
 思い返せば、銀龍はすぐに世界中のローを『エルプト』で消し去ってもよかったはずです。しかし、彼はそれをしませんでした。自分の前に立ちはだかったあなたたちの相手を、堂々と果たしたのです。
 世界を滅ぼすものとして、見事なまでの最期でした。

     ◆ ◆ ◆

 戦いの終わった今、空はいつの間にか紅くなっていました。
 あなたたちを乗せた空中船は、ゆっくりと地上を目指していきます。
「これで、全部終わったんだね」
――――ああ。
 クラリスの肩に手を乗せたまま、あなたは静かに答えます。
――――そう言えば、クラリスと最初に会ったのも、こんな夕暮れの中だったな。
 ええ、そうでした。右も左もわからぬこの世界にあなたが降りたち、そして、白髪の相棒と出会ったときも、空は火のように真っ赤でした。
 あなたは既に、自分の運命に気づいていました。それを、いつまでも隠しているわけにはいきません。
――――クラリス。
「なあに?」
 あなたは息を一つ吐くと、突然クラリスを背後からぎゅうと抱き締めました。
「わっ」
――――クラリス。手が……見えるか。
 あなたがそう言うと、クラリスは状況を一瞬で把握したようでした。いいえ、把握しないわけにはいかなかったのです。
「嘘……でしょ?」
――――いいや、これが本当のことなんだ。

 あなたは既に、消えかかっていました。

 あなたの腕は、脚は、全身は、既に霧のように薄くなっていたのです。
――――もう、帰るときが来たんだよ。
 空中船の上、あなたは囁くように告白します。
――――自分は、この世界の人間では無い。役目を果たした今、もうここにいてはいけないんだ。
「そんなことない……!」あなたの腕の中、クラリスはぷるぷると震えています。
「バートレーの取材、受けてあげなきゃダメだよ! バートレーは短気なんだから、きっと、ものすごい怒るんだよ?」
――――代わりに謝っておいてくれ。
「ルクレチアさんが、すっごいごちそう用意してくれるって……皆で一緒に食べに行こうって、約束したのに!」
――――自分の分は、クラリスにあげるよ。
「リミュニアと、遊びに行こうよ! わたし一人じゃ、また喧嘩になっちゃうかもしんない! ハミルトさんだけじゃ、きっと止められないよ? ベルがいなきゃ、わたしたち、仲良くできないよ!」
――――大丈夫。クラリスもリミュニアも、ハミルトも、きっと良い友達になれるから。
「デイヴの舞台、また一緒に見に行こうよ! 今度はお客さんとしてさ、サイファーも、皆も連れて行って!」
――――きっと皆嫌がるだろうけど、行ってみたかったな。
「サイファーは? サイファーはどうするの? せっかく認めてもらえたのに、あれでお別れなの? きっと褒めてくれるよ? よくやったって、笑ってくれるよ?」
――――それは、聞きたかったなあ。
 よみがえるのは、今まで旅してきた記憶。
 空っぽだったあなたの記憶には、今は抱えきれないほどの思いが詰まっています。これだけあるなら、もう充分です。
「もう、役目が無いなんてことない! ベルはリクディムの仲間だよ? 世界を救った勇者だよ? それに……わたしの、相棒でしょ。一緒にドリアデスに帰って、これからもイリーガル活動をして、そしてヒノハラの調査をするんでしょ?」
 クラリスは、堰を切ったように言葉を続けます。
「役目が終わったなんてこと、絶対に無い! わたしはベルにいて欲しいよ! それじゃ、ダメなの?」
――――すまない。
「謝らないでよ……」
 あなたの腕に、ぽたぽたと涙がこぼれ落ちました。
「どうして……どうして、ベルがいなくならなきゃいけないの? わたしは……」
 クラリスはそこでハッとしたように言葉を止めました。もう、あなたの身体は向こうが見えるほどに透き通っていたのです。
「……もう、どうしようもないことなんだね」
 あなたは抱擁の力を込め、肯定します。
 もう、残された時間は多くありませんでした。
「わたし……ベルがいなくても、大丈夫かな?」
――――クラリスらしくないな。
 あなたはにっこり笑います。
――――大丈夫。絶対、大丈夫だよ。
「あ……」
 クラリスが、何度かけてくれたかわからないこの言葉。根拠は有りません。しかし、あなたにとっては大きな助けとなったのです。……そしてそれは、クラリスにとっても同じことのようでした。
「わたし……」クラリスはあなたの腕の中、くるりと振り返りました。
「がんばるから!」
 瞳を涙に濡らして、
「絶対がんばるから!」
 声を震わせて、
「だから……心配しないでね!」
 相棒は最高の笑顔を見せてくれました。
――――言われなくても、知ってるよ。
 あなたは半年を共にした相棒の顔を、まじまじと見つめました。そして、
――――クラリス、ありがとう。
 クラリスが泣きだしたのを最後に、あなたはこの世界から消えました。

     ◆ ◆ ◆

 ぷつん、とあなたの意識が途絶えた瞬間です。私は体の半分が戻ってきたような感覚を覚えました。むくりと起き上がると、そこは雪山から出た船の中。体力の戻った私に喜ぶ僧侶たちでしたが、私は彼らを黙らせました。
「今、世界を救った人は、この世から姿を消しました」
 その意味するところがわかっていたのはバートレー一人だったでしょう。

 これが、あなたがレムリア大陸で過ごした半年間の出来事、一部始終です。

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